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スタッフインタビュー

消化器外科 松尾Dr

消化器外科では手術を行うだけでなく、手術後の治療まで含めた長いスパンで患者さんに関わっています。治療に不安を抱く患者さんに対して、「すべてを理解、共感するのは無理でも不安は軽減できるはず」と松尾泰子医師。担当の医師であると同時にチームの一員として、どんな思いで診療に取り組んでいるのかお聞きしました。

手術からその後の治療まで、責任を持って患者さんに関わりたい

私はもともと医療を通して社会の役に立ちたいという気持ちがありました。その中でも医師を選んだのは、「自分自身で判断し、責任もって診療にあたれる職業」という風に、資格によって制約されることなく患者さんの診療に主体的に幅広く関わっていけると思ったからです。

消化器外科は主にがんの患者さんを診療する科です。外科は手術だけをするというイメージがあるかもしれませんが、実際は手術前後の化学療法や、がんが再発した後の治療、さらには治療が難しくなった場合の緩和ケアにも携わります。研修医時代、研修先の消化器外科で印象的だったのが、手術という人生最大のイベントをともに乗り越え、患者さんやその家族と強い信頼関係を築き、最後の最後まで責任を持ってがんの患者さんを診ていた医師の姿でした。助かる方もいれば、残念ながら助からない方もいる、そんなすべての状況において手術を担当した医師が最後まで関わっていました。私もそんな診療をしたいと思い、消化器外科を選びました。

現在、私が専門としているのは肝臓や胆道、膵臓の病気です。特に肝臓を専門としていますが、肝臓の手術はバリエーションが非常に豊富で、手術前からチームで計画を立てて臨みます。医師になって十数年たちますが、今も修行中という気持ちで学ぶ姿勢を忘れないよう肝に銘じています。

他科と連携しながら、大学病院だからできる治療を提供

消化器外科では食道や胃、大腸、肝臓、膵臓など消化器がん全般を対象としており、さらに当科では小児外科や乳腺外科も一緒に診療を行なっています。特に強みとするのが膵臓がんの診療です。膵臓がんの手術は高度な技術が必要な手術ですが、教授の専門が膵臓がんということもあって症例数が多く、治療成績も良好です。また、様々な合併症を持った患者さんなど、手術だけでなく手術後に集中治療室での慎重な管理が必要な患者さんも、他科と連携して当院では治療にあたることができます。もちろん、がん以外にもさまざまな消化器疾患を広く診療しています。大腸であれば潰瘍性大腸炎やクーロン病などの炎症性腸疾患もありますし、消化管穿孔や胆嚢炎、虫垂炎などの緊急手術も行います。

私が医師になったのは、開腹手術から腹腔鏡手術に移行してきた時代でした。現在は腹腔鏡手術による低侵襲な治療が可能になり、ロボット支援手術も広く導入されるようになりました。そういった最新の治療を提供できるのも大学病院の特徴です。当院では消化器外科だけでも、さまざまながんに対してロボット支援手術を行っています。

その他にも大学病院だから可能な手術は多くあります。例えば広範囲にわたって臓器を切除するような手術では、産婦人科や泌尿器科、血管外科など、院内の関係診療科と連携して治療しなければなりません。大学病院でしかできない治療があるという強みを最大限に活かし、高度な医療を提供したいと考えています。

情報共有を強化し、チーム医療で専門性を発揮する

消化器外科では専門領域ごとにチームに分かれており、私は肝胆膵チームに所属しています。一つひとつの症例についてチーム内でディスカッションし、改善点が出てくれば次に活かしていく。こうした情報共有やディスカッションの積み重ねが、治療の向上につながるのではないかと思います。また、治療に難渋する症例があれば、チーム内だけでなく消化器外科全体、さらに消化器内科や放射線科などの医師との連携も不可欠です。どの診療科の医師も積極的で相談もしやすく、緊急対応を要する時は迅速に対応してもらえるので助かっています。

チーム医療においては情報共有が重要で、主治医しか病状を把握していないという状況は避けなければなりません。私たちは日ごろから情報共有を徹底しているので、不測の事態が起きた時に主治医が不在でも、別の医師がすぐに対応することができます。さらに、チームで診療することによって、主治医のみではケアしきれていなかった部分など、様々な面から患者さんに対応することができると思います。かつては何でもまずは主治医に確認してというような風潮がありましたが、今はチームで動くのが当たり前になり、時代が変わったなと思います。

医師の働き方に関しても、昔は休日に呼び出されるのが当然でしたが、現在は週末を当番制にして、ある程度オン・オフを分けて勤務できるようになりました。それも情報共有を徹底するから可能なのだと思います。私は休日に山に登ったりしますし、夏休みは南の離島でゆっくりして休み明けに備えるなど、リフレッシュする時間を作って気持ちを切り替えています。そういったオン・オフの切り替えが、さらに良い診療につながっていくと思います。

手術を担当した患者さんが回復し、元気そうな姿を見るのが嬉しい瞬間

手術を担当する以上、何があっても自分で責任を持とうと考えています。チーム医療の時代においてこんな考え方は少し古いのかもしれませんが、代々先輩からそう教わってきたので基本的な心構えとして大事にしています。がんの患者さんを診る科は他にもありますが、手術の後、抗がん剤の治療も含めてずっと1人の患者さんを診ていくというのは消化器外科だからできることです。患者さんにとっては自分のことを理解し、信頼できる医師がいることは重要なポイントですし、私自身、そうやって責任を持って対応することがやりがいにつながっています。

医師として一番嬉しいと思うのは、何といっても手術を担当した患者さんが元気になって退院される時ですね。自分の行った手術で病気が治り、その後も定期的に通院しながら元気にされているのは本当に嬉しいことです。月並みではありますがそれに尽きます。

その一方で印象に残っているのはどんな患者さんかというと、できる限り手を尽くしても命を救えなかった方々です。医療がさらに進歩して将来的にそういった方々も救える時が来ることを祈りますし、そのための研究にも携わっていきたいと思っています。

患者さんのすべてを理解するのは不可能でも、
不安を軽減することはできる

当たり前のことですが、患者さんに説明する時は伝わらないと意味がないので、難しい医学用語は使わないようにしています。ご高齢の方でも理解しやすい、馴染みのある言葉で説明し、きちんと理解していただけているかを適宜確認するよう心がけています。がんの患者さんの多くはご高齢の方ですから、私から見ると人生の大先輩ばかり。敬意を持って接することも大切ですね。

患者さんとお話しする時にいつも難しいと感じるのは、自分がその病気にかかったことがないため、患者さんのすべては理解しがたいことです。ただ、患者になった経験はなくても、さまざまな患者さんを診てきた経験は持っています。がんの患者さんは誰でも手術や抗がん剤治療に対して不安があると思うので、今までの経験を元にできる範囲でアドバイスなり提案なりしています。すべてについて共感するのは無理かもしれませんが、少しでも不安解消につながればと思っています。

何かあった時、医局では助け船を出し合うのが
当たり前という文化がある

消化器外科には色々なタイプの医師がいます。体力が必要な仕事なので、学生時代にスポーツに打ち込んでいた人も多く、今でもマラソンや水泳、自転車、テニスなど継続してスポーツしている医師もいます。もちろん体育会系ではない人もいて、私は中学から大学まで吹奏楽部でサックスを吹いていました。

多様な個性を持つ医師がいる中で共通しているのは、チームでの医療を優先する視点があること。外科では誰かの助けがないと手術も診療も不可能で、単独行動は成り立ちません。患者さんのことに関しては主導権を握って対応しますが、治療方針を決める時はあらゆる人と相談しながら進めています。チームで連携することに重きを置いているので、緊急対応が必要だったり誰かが困っていたりすると必ず誰かが助ける雰囲気があります。

なお、他の大学病院に比べると、当院の消化器外科には女性の医師が比較的多く在籍しています。海外留学から帰って第一線で働く人や、育児と両立して頑張る人もいて、ライフスタイルに合わせて勤務しています。女性の医師が活躍できるように教授が気にかけてくれているところも大きく、感謝しています。

患者さんが行き場をなくすことのないよう地域連携を重視

奈良県内の医療機関は数が限られますが、関連病院で治療が難しい、緊急対応できないといった時に患者さんが行き場がなくなるような状態はあってはなりません。当院は大学病院として高度な治療技術や人員を備え、地域での対応が難しい患者さんを最終的に受け入れる位置づけにあります。地域の医療機関で万一困ったことがあれば気軽にご相談・ご紹介ください。

地域の先生方とは年に1~2回ほど、地域連携カンファレンスで情報交換をする機会があります。開業医の先生方にしてみれば、顔を見たこともない医師に患者さんを紹介するのと、どんな医師がいるか分かった上で紹介するのでは全く違ってきます。Face to Faceでお互いのことを知り、より強固に連携しながら地域の患者さんの治療に当たっていきたいと思います。

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