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スタッフインタビュー

泌尿器科 鳥本Dr

泌尿器科では前立腺がんをはじめとする泌尿器疾患を幅広く診療しています。鳥本一匡医師は自身の専門とする排尿障害について、「生活の質を左右する障害だけに改善した時の喜びも大きい」と話します。泌尿器科における診療の特徴や強み、鳥本医師が患者さんと接する際に心がけていることなどを詳しく伺いました。

厳しい指導を受けながら排尿障害の奥深さを
学んだ研修医時代

子どもの頃、近所に小児科の開業医の先生がおられて、風邪をひくとそちらを受診していました。診てもらった後はいつも院内で調剤する様子を眺めたりしていて、子ども心にその先生のことを「かっこいいな」と思っていたんです。それが医師を目指すようになった最初のきっかけですね。小学校の卒業文集でも「将来は医師になりたい」と書いたことを覚えています。

学生時代は、所属したテニス部の部長が泌尿器科の教授だったため、泌尿器科の講義は最前列で受けており、とくに勉強をしたわけではありませんが他の診療科よりも親近感をもって見ていました。その先生方の体育会系のノリが、「この人たちとなら一生一緒に働いていけるな」と思うほど和気あいあいとしていて、その影響もあって泌尿器科に進みました。ところが、いざ研修が始まると先輩の指導が厳しくて大変でしたね。最初に指導を受けた医師は排尿障害が専門だったのですが、なぜこの太さのカテーテルを選ぶのか、この患者さんになぜこの対応が必要なのかと、何から何まで問われる毎日。最初はどうしてこんなに怒られるのかと思いましたが、そのおかげで必死に勉強するわけです。すると自分の問題が見えることもあって、どんな分野でも突き詰めると面白くなるものだと実感しました。結局、現在はその先輩と同じ排尿障害を専門としています。

排尿障害に関しては米国に留学して研究した時期もありました。そこでは国際学会で発表する機会もあって人脈も広がり、診療にも研究にも、いっそう意欲的に臨むようになりました。後輩の医師たちも何らかの形で成功体験を積む機会を作れるように、今度は私がサポートする側になりたいですね。

前立腺がんへのロボット支援手術や治験など、
大学病院ならではの診療が強み

奈良県内で医学部があるのは当大学だけで、ここが最終ディフェンスラインである。私たちはそんな気概を持って取り組んでいます。泌尿器科が対象とする臓器は幅広く、副腎から腎臓、膀胱や尿道、外性器まで含まれます。がんの中で特に患者さんが多いのは前立腺がんです。泌尿器科では早くから前立腺がんに対する小線源治療を導入し、ロボット支援手術も多数実施しています。がんの場合、外来化学療法には腫瘍内科の医師も一部関わりますが、治療方針や計画を決める段階から、薬物治療、放射線治療、手術に至るまで一貫して泌尿器科の医師が責任持って担当します。

ロボット支援手術は近年急速に広まりましたが、細かな縫合操作がしやすく、手術後のトラブルが起こりにくいのが利点です。機器の進化もさることながら、腹腔鏡手術を含む従来の手術に比べると医師が習熟する期間が短いという特徴もあります。全員で手術映像を見ながらその場でアドバイスすることもできるので、実際に手術を担当する医師は1人だとしても、大勢で行っているようなイメージで進めることが可能です。現在は前立腺がん以外に、腎臓がんや膀胱がん、がん以外の骨盤臓器脱、腎盂尿管狭窄などにもロボット支援手術が広がってきました。

治験を行っていることも大学病院ならではの特徴です。従来の治療では対応が難しかった患者さんも、薬によっては今までなかったような効果が得られることがあり、患者さんのお役に立っていると感じます。

患者さんがどんな選択をしても、責任を持って寄り添っていく

泌尿器科では「自分の親なら、子供ならどうする」という理念が代々受け継がれてきました。この言葉の通り、「この病気にはこの薬が効くはず」というような通り一遍の治療ではなく、親身になって診療する姿勢を大事にしています。例えば、最近は医師が治療の選択肢を提示して患者さんに選んでいただくのが当たり前になっていますが、選びかねて困る患者さんもいらっしゃいます。そんな時は患者さんの性格や年齢、家庭環境も含めて一緒に考えながら提案し、その上で納得していただく必要があります。もちろん、治療方針が決まった後は、それを選んだ患者さんだけが責任を負うわけではありません。患者さんがどんな選択をしても、私たちは責任を持って最後まで寄り添う。これは絶対に譲れないところです。

治療方針を決める時は患者さんの生き方や死生観なども影響しますが、同時に、医師である私自身も自分なりの死生観のようなものを持っておかなければなりません。そうでないと患者さんに何を言っても響かないのではないか、本当の意味で親身になれないのではないかと思うのです。患者さんの多くは目上の方ですが、皆さんの意思を尊重しつつ、包み込むような言葉をかけられるようになりたいと思い色々勉強もしています。誰もがいつかは亡くなりますから、普段からそこまで見越して話せるような関係性を作れたら理想的なのでしょうね。私の思いも上乗せしながらご説明し、一緒に治療していけたらと思っています。

「患者さんは知っているはず」という思い込みを捨て、
情報を発信し続ける

最近は過活動膀胱についてテレビなどのメディアで取り上げられる機会が増え、泌尿器疾患が身近な病気になってきました。しかし、市民公開講座で泌尿器疾患のことをお話しすると、「まったく知らなかった」「泌尿器科には行ったことがない」という方が決して少なくありません。私たち医師が「もう多くの人が知っているだろう」と思うような病気や治療でも、まだ広まっていないことが多いのです。

先日担当した市民講座では睡眠と夜間頻尿をテーマとしましたが、「こういう話を聞きたかった」とおっしゃる方が多く、一連の講座の中でも一番人気が高かったそうです。睡眠も夜間頻尿も日常に関わることですから、高齢になると「実は私も」と皆さん関心を持たれるのでしょう。私たちにとってはマンネリ化したように感じることでも、やはり発信し続けなければ浸透していきません。こうした一般の方向けの講座は今後も続けていきたいと考えています。

排尿トラブルは日常に関わる症状だけに、
改善した時の喜びが大きい

世の中には人に喜ばれる仕事が数多くありますが、医師の仕事ほど心から感謝される職業はないのではないかと感じることがあります。患者さんから「元気になりました」「病気が治りました」と言われると、つくづく医師になって良かったと思います。

もっとも、私が専門としている排尿障害は生死に関わることが少なく、「命が助かりました」と言われるようなことはあまりありません。しかし、排泄は日常に関わることなので、患者さんが少し対応を誤っただけでも臭いに悩んだり、つらい思いをされたりします。そのぶん、些細なことでも改善して生活に支障がなくなると皆さん非常に喜ばれるので、私たちもやりがいがあります。

排泄の悩みを「年のせい」で済ませず、まずはかかりつけ医に相談を

通常、患者さんはいきなり大学病院を受診するのではなく、いったん地域の医療機関を受診し、必要に応じて紹介されて受診されます。そのため地域の先生方にとっては、「夜間頻尿くらいで大学病院に紹介しなくても」と思われるなど、紹介するべきか否かの線引きが難しいこともあるのではないでしょうか。もし本当にお困りの時は当科に一度ご相談の上で紹介していただければ、可能な限り良い状態にしてお返ししたいと思っています。

患者さんの中には、「年のせいだろう」と思って受診しない方もいらっしゃるかもしれません。排泄に関する悩みは人に言いにくいと思いますが、ちょっとした生活指導や薬物治療で楽になることがよくあります。気になることがあれば、まずはかかりつけ医に相談することをお勧めします。

まだ受診も診断もされていない、
潜在患者を救うような研究にも取り組みたい

私は夜間頻尿を研究テーマの1つとしていますが、夜間頻尿における一番の問題は睡眠が障害されることです。泌尿器科では珍しいと思いますが、当科では脳波を使った研究も行っています。問診だけでは実際の睡眠の状態がつかめないので、脳波測定も活用し、睡眠に関して踏み込んだ研究を進めているところです。

また、頻度の高い病気ではありませんが、難治性疾患の1つである間質性膀胱炎の画期的な診断法を開発する研究も進めています。間質性膀胱炎の患者さんは国内に5000人程度だとされますが、頻尿が気になって受診しても診断がつかず、間質性膀胱炎だと分かっていない患者さんが大勢埋もれていると思うのです。簡単な診断法があればそういった方々を救える日が来るはず。日常の診療とあわせ、そういった研究にも積極的に取り組むつもりです。

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